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| 職場における健康管理「第13回」 岐阜大学医学部産業衛生学助教授 井奈波 良一 生体リズムと健康 からだを調節する仕組みのひとつに時計(生体時計)がある。この時計は、親からもらった時計遺伝子と、日頃暮らしている環境の時計、との相互作用でできあがっている。 生活している環境の1日は、24時間周期であるが、時計遺伝子の1日周期は、理由は不明だが、25時間であるといわれている。両者間には1時間の差があり、ヒトは生まれた時から、24時間と25時間の周期の間に自分特有の周期を作り上げる。例えば、できた時計が24.5時間の周期だとすると、自分の時計は、腕時計より毎日30分ずつ遅れてしまい、このままでは時計が狂ってしまって、からだの調節が整わないようになってしまう。 それでは、この時計の遅れを取り戻すためにはどうすれば良いかを考えてみよう。田村康二山梨医科大学名誉教授は、それにはまず朝日を全身で浴びることが効果的であるとしている。太陽が地平線に昇る寸前の青白い曙の光は、スペクトルが500ナノ・メーターであり、この朝日が目に入ると網膜に達する。この刺激は、網膜から脳の中央部にある視交差上核という時計遺伝子の塊に到達し、この核からさらに刺激は松果体に行き、これが時計ホルモンとして全身に働いているメラトニンの分泌を抑えるといわれている。メラトニンの血中濃度が下がると、からだは目覚める。目覚めた時に青白い朝日を浴びると、体内時計の針は30分後ろに戻り、その結果として時計は24.5時間の周期から24時間周期に訂正される。 それでは、からだによい起床時間はいつかを考えてみよう。それは、これまで述べてきたことからも明らかなように、日の出前の時間であり、季節によって異なる。これが昔から早起きは三文の得といわれている理由でもある。早起きはもはや道徳ではなく、その優れた効用は科学的に証明されている。 日が上がってしまうと太陽の光は黄色くなり、スペクトルは600ナノ・メーターであり、体内時計を戻す効果はないとされている。 時間と病気との関係 病気には発生しやすい時間帯があることが明らかになってきた。田村名誉教授は、この時間帯を「科学的な魔の時間」と名付けて注意を喚起している。すなわち病気は1日中同じ割合で発症しているのではなく、ある一定の時間的な集積がある。この理由を解明しているのが時間医学である。 夜明け前には気管支喘息が発症しやすい。特に注目する必要のあることは、朝方に発症する病気に命にかかわる病気が多いことである。すなわち狭心症、心筋梗塞、脳血栓、突然死などは朝に多く、それも起床時の2時間以内に圧倒的に多い。 これまでの医学では病気治療の手掛かりはまずどの地域に多いかにあった。新たに病気の手掛かりとして注目されてきた時間的集積の理由には、生体時計がある。人体すべての細胞の中には、ほぼ1日の生体時計が植え込まれており、それで細胞や組織は、1日というリズム、すなわちサーカディアン・リズムでそれぞれ山と谷を造りながら動いているといわれている。例えば血圧は通常朝の3時ごろに一番低く、その後、緩やかに上昇し始めて、起床とともに急激に上昇する。その後血圧は、午後3時頃に最高に達して、以後は低下していくという1日の変動がある。すなわち朝方の急激な血圧上昇が動脈に急な負担を与えて、これを小さく引き裂いて傷つけてしまう。するとこの傷を治そうとして血の糊状の塊である血栓ができる。この血栓が大きくなり過ぎると動脈を塞いでしまう。これが心臓を養っている冠動脈で起きれば心筋梗塞であり、脳動脈で起きれば脳血栓になる。この血栓を造るには、その他の多くの因子が関わっているが、その多くの因子はいずれも起床時の2時間内に最高となる。そこで朝の病気の「魔の時間」が発生してくる。 魔の時間を知っていれば、これを避け、避けられない時には予防対策を講じることができる。田村名誉教授は、次のような健康法の実行を呼びかけている。
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