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広報誌 ネット&ライン No.101 2003 夏号
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新市誕生 −山県市の事例−
山県市企画部情報政策課 主任主査 江崎 英樹



はじめに
 山県市は、15年4月1日に旧山県郡3町村(高富町、伊自良村及び美山町)が合併して誕生した。住民サービスの更なる向上を目指し、高富町役場を本庁、伊自良村役場を伊自良支所、美山町役場を美山支所とし、旧町村の出先機関及び山県郡3町村で構成していた一部事務組合を市の出先機関とする組織編成となった。
 電算システムの統合に当たって住民情報、財務会計等の電算業務については、3町村とも財団法人岐阜県市町村行政情報センターのシステムを利用していたので問題なく、スムーズな移行を図れたものの、ネットワークの構成に大きな違いがあったため、合併を進めるに当たっての検討課題となった。
 そこで、システムを統合するための条件を、将来にわたるシステムの拡張性及び情報の保護とし、国のe-Japan重点計画の推進に伴い、今後増大するであろう住民生活に必要な行政情報の提供、申請・届出手続きの電子化等のニーズに対応していくことができるシステムを構築することを最優先課題とした。同時に住民情報等の個人情報を保護するなどセキュリティの高いシステムとするために、ネットワークをOA系と業務系の二つの部門LANに分け、それぞれ独立したネットワークでシステムを稼働させる方式を採用した。

統合に当たっての現状と課題及び方針
 合併に当たり電算システムの統合に向けて本格的に動き出したのは、14年7月、合併のわずか9か月前のことである。それまで各町村の首長級で構成する「幹事会」、下部組織である「専門部会」、更にその下に「分科会」を組織した。合併に関する基本方針を幹事会で決定し、それに基づいて事務の一元化作業を各分科会で検討し、専門部会及び幹事会に諮りながら各課、各担当者等で協議を行ってきた。
 財務会計、住民情報、健康・福祉情報等各システムの取扱いについては、各担当課で協議を行い、分科会にて方針を決定し、データの統合などの作業を進めることとしたが、全体的なシステムの統合については、情報化の属する一般管理分科会で合併に向けたシステム構築を行っていくこととなった。この時点で3町村のネットワークについての現状把握はできていたので、システム統合の方式についての検討から始めた。

現  状
高富町
  一人1台パソコン導入済(インターネットへの接続無し)、財務会計システム、住民情報システム及び健康・福祉情報システム
伊自良村
  一人1台パソコン導入済(インターネットへの接続あり)、住民情報システム
美山町
  一人1台パソコン導入済(インターネットへの接続あり)、財務会計システム、住民情報システム及び健康・福祉情報システム

 ネットワークの現状については、3町村がほとんど同じで、主な相違点は美山町のみ財務会計システムのパソコンがインターネットに接続できている点である。合併前と合併後のシステムの変更は図1のとおりである。

(図1)
ネットワークの現状

 各町村の現状把握を綿密に行った後、次のとおり二つの部門LANの整備を行うこととした。
 一つ目は、個人情報の情報漏洩の防止、外部からの侵入等あらゆる攻撃からセキュリティを高めるため、財務会計、住民情報及び健康・福祉情報の各システムを業務系ネットワークと定義し、インターネットに接続しないことに決定した。
 二つ目は、一人1台パソコンはインターネットに接続し住民への情報発信、電子メールやグループウエアを利用した事務の効率化あるいは将来の電子申請や電子入札等、電子市役所に向けた開かれたネットワークとして、OA系ネットワークと位置付けた。

(1)業務系ネットワーク
 現行のシステムをそのまま活用し、財務会計システムサーバ、住民情報システムサーバ及び健康・福祉情報システムサーバを新規に導入した。旧町村役場にあるサーバ等は全て本庁に移設し、支所は専用線、その他出先機関の端末は、ダイヤルアップで本庁に接続することとした。

(2)OA系ネットワーク
 新規にネットワークを構築し、一人1台パソコンと接続する。グループウエアやメール及びウイルス対策のアプリケーションは既存のものを利用し、その他のアプリケーションについては使用できるものを限定し、費用の増大を抑制した。また、2支所については、業務をスムーズに行えるようサーバを導入し、専用線で本庁サーバと接続し、出先については本庁及び各支所へ無線又はダイヤルアップで接続することとした。
 14年9月に各町村の分担金にて予算を確保し、各町村1人ずつ計3人でシステムの整備をスタートした。合併時の15年4月1日にシステムが滞りなく稼働することを目標に検討を行った。合併までの期間が半年と短かかったため、週1回のペースでベンダーを交えた定例会を行い、問題点等の洗い出し、その解決方法の検討などを行った。

(図2)
OA系ネットワーク

統合を終えての課題
システムを統合する際、一番問題となったのは組織の概要が決まっていないことであった。システム構築においては端末の台数、あるいは端末の設置場所等の詳細設計も必要となってくるため、合併後の組織、職員の配置等が明確でないと設計ができないといった事態が生じてくる。その結果、組織構成が決定されるまでシステム設計を待たなければならなくなり、整備に遅れを生じそれが焦りともなってくる。週1ペースで定例会を開催しているにもかかわらずである。
 電算関係は、今や住民サービスの上で欠かせないものになっており、失敗は許されないものであることから、その構築に当たっては事前に何が必要であるか、ベンダーを交えてよく調査した上で、作業を行うことが重要である。
 通常行っている事務をシステム化するという単純な構図から考えれば、合併に関するすべての方針が決定してから、システム構築に取り掛かる方がシステムを仕事に合わせた真に使いやすいシステムを構築できるが、現実には難しいと思われるため、必要不可欠なものを調査し、必要であれば幹事会及び専門部会に要望をしていくべきであった。
 また、予期しない事態が発生した場合、迅速な判断をすることのできる体制が必要であり、事業推進課の職員がITに関してある程度の知識を持っていることも重要である。
○事前調査による、システム構築の必要不可欠な要素の確定及び情報取得(ex.組織図、建物内のレイアウト図、公共施設一覧等)
○迅速・的確な判断ができる体制づくり
 この2点は特に、システムの統合を行う上で非常に重要な要素であると考えられる。

おわりに
 さて、15年4月1日合併の当日、懸念されたシステムの稼働であるが、各システムのベンダーの方々にも朝早くから待機してもらう中、一部の課でOA系ネットワーク側でハブの原因によるネットワークの未接続があった以外は概ね滞りなくスタートができた。また、ネットワークを業務系とOA系に分けたこともシステムをスムーズに稼働させる要因ともなり、その後問題もなく現在まで推移している。
 今思えば、ここまでこぎ着けるのに、わずか半年の間ではあるが、何年間もの業務が凝縮されたような密度の濃い作業であったと振り返っている。
 今後、LGWAN、電子申請、電子入札等電子市役所の実現に向けた取組が必要となってくる。また、個人情報保護法が成立したことから、住民情報システムや財務会計システムに含まれる個人情報に対するセキュリティを堅牢にし、今回整備したシステムを維持しながら新しいシステムの導入を図ることが重要である。