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広報誌 ネット&ライン No.103 2004 冬号
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リフレッシュコーナー

職場における健康管理「第16回」
岐阜大学医学部産業衛生学分野助教授 井奈波 良一

累積疲労について(その2)
 前回、数年から十数年の残業や土日出勤、週末出張などの激しい労働の疲労が累積して起こる病気「累積疲労」は3期に分けられ、前期(正常睡眠期)→中期(過剰睡眠期)→末期(不眠期)と進行することを述べた。今回は、累積疲労のタイプとその予防について考えることにする。

「累積疲労」のタイプ
 累積疲労には、治りやすいタイプアルファとなかなか治りにくいタイプベータの2種類あることが最近分かってきた。
 累積疲労タイプアルファは、工事現場やスポーツ選手など身体を動かすことが主たる仕事の方に多くみられる。それらの疲労は主に筋肉の使い過ぎによるものである。筋肉を過度に使うことによって起きる炎症、断裂、捻挫、疲労骨折、運動神経磨耗状態などである。
 治りにくい累積疲労タイプベータは、いわゆる頭脳労働者といわれる方にみられる累積疲労である。デスクワークが主な仕事である方たちは、ほとんど身体を動かさない。わずかに脳細胞だけをフル稼働して、あと残りの身体のうち動かすのはパソコンのキーボードを打つ両手だけである。それでもマウスを使う場合、手を多く使うため、左右のアンバランスが起こっていることが分かった。人体は、不自然な姿勢で労働を続けることに、耐えるようにはできていない。累積疲労タイプベータの方は、無理な姿勢の長時間の維持による首と肩の血管の収縮とそれによって起きる首、肩の筋肉痛、筋肉と靭帯のねじれ、下半身の慢性的な血行障害によって累積疲労が引き起こされる。また、頭脳労働によって脳神経ばかり長時間興奮させられると、自律神経や運動神経までが調節障害という悪影響を受ける。その結果、目が悪くないのに、近いところも遠いところも焦点が合わなくなったりする。このように複合的な身体のメカニズムが治りにくい「累積疲労タイプベータ」を引き起こしている。

「累積疲労」の予防
 累積疲労の予防として、実際にできる範囲を以下に列挙すると、
(1)夜型の仕事の方は、遅寝遅起き、一般の方は早寝早起きに徹する
(2)バナナ一本でもよいので必ず朝食をとる
(3)できるだけ、昼に30分程度、長くても1時間以内の仮眠か昼寝をする
(4)30分に一度は、仕事中にストレッチをする
(5)時間差通勤で、同じ姿勢をとり続けるつり革立ちパントマイムを回避する
(6)仕事でない付き合い残業はやめ、5分でも10分でも早く家に帰る
(7)1日に30分は散歩を心がけ、できれば下半身の筋肉トレーニングをする
(8)20分以上38度(夏)〜39度(冬)の風呂に入って疲労をとる
(9)その週の疲労は、その週の週末にとって、疲労を累積させない
(10)会社のために全てを捧げるという滅私奉公(アリ)の考え方をやめて、自分の将来のために働く(キリギリス)という考え方に軌道修正する

イラスト 凧
参考文献 堀史朗:「累積疲労」の全体像とその予防
労働の科学 57(5):277-280, 2002.