| 広報誌 ネット&ライン>No.110 | ||||
|
![]() |
![]() |
| 岐阜県知事公室情報政策課 |
| 1 はじめに |
| 岐阜県では、住民本位の電子自治体の実現に向けて「岐阜県電子自治体推進市町村・県連絡協議会」を設置し、市町村と県が協働して情報化を推進しています。 17年8月、同協議会内に10市町が参加するCRM部会を設置し、自治体CRMについて検討を進めています。 |
| 2 背景 |
| これまでの行政窓口に対しては、「どこに聞いていいのか分からない」「いろいろな部署を行ったり来たりさせられる」といった不満や「夜間や土日も対応してほしい」「もっと早く回答してほしい」などの要望が住民から寄せられていました。 他方、市町村合併の進展によって、住民に身近な庁舎の職員が減り、住民サービスを効率的に維持・向上させることが課題となっています。 その解決策の一つとして、住民ニーズに対応した満足度の高い行政サービスを実現するため、CRMの手法によって自治体コールセンターを構築する事例が注目されています。 県では、企業誘致を目的に、15年に市町村と県の関係部局、それにCRMベンダーなどが参加して、「岐阜県CRM研究会」を設置しました。その結果、岐阜市内に大手損害保険会社のコールセンターが進出するなど企業誘致の面では一定の成果を収めており、今後は企業のコールセンター誘致のみならず、自治体業務でのCRM導入について検討を進めることとしています。 |
| 3 先行自治体の「自治体CRM」事例 |
| ■札幌市「ちょっと教えてコール」
札幌市では、15年4月に日本初の自治体コールセンター「ちょっと教えてコール」が全市でサービスを開始し、年中無休で午前8時から午後9時まで、回答用のFAQデータベースを基に市民からの問い合わせに答えています。16年度は年間約8万5千件の問い合わせが寄せられ、このうち99.1%をコールセンター内で回答しています。同市が今年4月に行った満足度調査の平均点は10点満点中9.62点で、このうち78.9%の利用者が10点満点をつけるなど高い評価を受けています。 ■東松山市「市民の声システム」 一方、埼玉県東松山市では、住民ニーズを把握するための「市民の声システム」が構築されています。このシステムは、職員の業務プロセスを標準化して管理する全庁的なBPRによって、効率的な業務の推進と均一的なサービスの提供を目指しています。また、住民からの問い合わせを受け付けてから回答が完了するまでの履歴はデータベースで管理(リクエスト・マネジメント)されています。このためオペレータは、住民からの問い合わせに対してFAQを参照するだけでなく、このデータベースにアクセスして、進ちょく状況についても的確に回答することができます。このほかGISと連携させることで、正確な位置把握ができるようになり、苦情や要望の地理的な分布を分析しています。 |
| 4 岐阜県型自治体CRMの考え方 |
| 東松山市が取り組んでいるリクエスト・マネジメントの整備も、札幌市に代表されるコールセンターの先行構築もそれぞれに優れた点があり、いずれかを選択するというものではありません。 また、市町村・県ともに財政は厳しい状況にあり、住民サービスの向上が図られるとしても費用対効果の観点から、可能な限り経費を節減する工夫が必要であることは言うまでもありません。一般的に市町村の業務は、戸籍・税務をはじめ多くの分野の届出や手続などで、同一又は類似の業務プロセスを有する行政サービスが多くあると思われます。 これらの状況を踏まえて考えられる、岐阜県型自治体CRMのモデルは次のようなイメージです。 |
![]() |
| 住民に対して、電話、ファックス、電子メール、ポータルサイトでのFAQ検索など、複数の問い合わせ手段(マルチチャネル)を用意し、電話などは市町村と県が共同でコンタクトセンターを構築してオペレータが一次対応します。このうち、届出に必要な書類やイベント開催期日の案内などの「よくある質問」は、あらかじめ回答をFAQデータベースに登録しておき、コンタクトセンターで参照して回答します。 一方、個人情報を取り扱う内容や回答に権限を伴う問い合わせについては、市町村や県の担当者とバーチャルに連携し、対応を引き継ぎます(エスカレーション)。これにより、相互の連絡や業務指示をスムーズに行います。 また、FAQを拡充し、ナレッジデータベースとして、住民が検索するだけでなく、コンタクトセンターのオペレータや市町村と県の担当者が有機的に活用する仕組みの構築を目指します。 |
| 5 期待される効果 |
| こうしたコンタクトセンターが構築された場合に、期待される効果は次のようなものです。
■マルチアクセス・マルチチャネル これまでと比較して、窓口の開設時間が拡大されることから、問い合わせをする住民の自由度が増します。 ■ワンストップサービス・進ちょく管理 最初に対応するコンタクトセンターのオペレータが、その場で回答できる内容についてFAQデータベースを参照して答えるほか、必要に応じ、責任を持って担当する部署に引き継ぐため、いわゆる「たらい回し」がなくなります。現場での作業など一定の処理期間が発生する事案についても、進ちょく状況を常に把握することにより、住民からの問い合わせに回答できるほか、万一の処理忘れを防ぐ効果も期待されます。 ■関連する手続の一括管理 これまで複数の部署にまたがっていた関連する手続を、「ケース」として一括して管理することで、単なるQ&Aにとどまらず、実際に手続をする住民の立場に立った回答が可能になります。例えば、市町村への転入時には、転入届だけでなく、印鑑登録や児童の転校手続、国民健康保険、介護保険、上下水道など関連する手続について、一回の問い合わせで体系的に案内できます。 ■行政側のメリット 行政にとっては、定型的な問い合わせをコンタクトセンターで対応することで、職員は本来業務に集中することができます。また、住民からの問い合わせや提案などが統計的に処理されて提供されることで、住民ニーズが定量化されて把握しやすくなり、質問の多い内容を広報紙に優先的に掲載したり、政策を検討する際の参考資料とすることにより、住民の声を行政に反映することができます。 ■共同化のメリット 市町村と県が共同で構築することにより、一つの市町村庁舎の中だけでなく、市町村と県の枠組みを越えた問い合わせに回答することができるようになり、住民が問い合わせ先の選択に迷うことがなくなります。 |
| 6 今後の課題 |
| 多くのメリットが期待できる自治体CRMですが、こうした新しいサービスを市町村や県のすべての分野で直ちに適用するのは現実的ではありません。 どのような機能が求められるのかを整理し、段階的な実施スケジュールを立てた上で、これを実現するシステムや運営組織、費用対効果などについて、参加する市町村や県で検討する必要があります。 また、導入を契機として、これまでの事務事業や組織、定数の見直しや、行政全体のBPRにどうつなげていくかも重要な課題です。 |
| 7 おわりに |
| 自治体CRMは、全国的にもまだ一部の都市で導入が始まったばかりであり、「自治体CRM」という言葉自体もしっかりと定義されたものではありません。 地方分権や市町村合併の進展、税収の減少、住民ニーズの多様化、団塊世代の大量退職による組織再構築など、地方自治体を取り巻く課題は多岐に渡ります。そうした中で、自治体CRMの導入は、住民満足度の向上や効率的な行政運営を進める上で、大きな効果をもたらすと考えられます。 CRM部会では、市町村と県での共同システム構築などを含めて先行事例の調査研究やコンテンツの検討を進め、具体的な成果を出していきたいと考えています。 |
|