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広報誌 ネット&ライン No.91 2001 冬号
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岐阜大学医学部衛生学教室助教授
井奈波 良一
 前回は、脳血管疾患及び虚血性心疾患の予防ということで、これらの疾患の種類と危険因子の概要を述べた。今回は、脳血管疾患及び虚血性心疾患の危険因子のうち、通常広く認められているものについて具体的に述べることにする。

■血圧
 高血圧は、多くの循環器疾患の危険因子として第一に挙げられる。脳血管疾患、虚血性心疾患における高血圧の役割は、脳血管疾患では全体に影響が大きく、特に脳内出血では決定的な危険因子と考えられている。
 高血圧を予防するためには、減塩(1日の食塩摂取量は、できるだけ10グラム以下に抑える。)を守り、肥満を解消し、適度な運動(日常生活の場では、早歩きを毎日30〜60分繰り返す程度)を続け、上手に身体的・精神的ストレスを解消することが重要である。
 職場での高血圧の管理には、健康診断などを活用し、悪化予防のための措置をすることが大切である。
■血清脂質
 食べ過ぎたり動物性脂肪を多量に摂取すると、血液中のコレステロールや中性脂肪などの血中脂質の値が高い高脂血症になりやすい。高脂血症が多い地域では、虚血性心疾患が多いことが報告されている。一方、脳血管疾患については、血中脂質との関係は明らかではなく、脳内出血に関してはむしろ低脂血症で多く発生するとされている。
 脂肪は水に溶けないため、血液中のコレステロールは、小さい脂肪粒子の表面を蛋白質が覆うような形となっている。その種類としては、脂肪分の割合が高く、密度が低い低比重リポ蛋白(LDL)、密度が高い高比重リポ蛋白(HDL)などがある。LDL中のコレステロールは、動脈壁に取り込まれて動脈硬化を促進する。HDL中のコレステロールは、高い方が虚血性心疾患になりにくい傾向がある。
 鶏卵は、良質の蛋白源であるが、卵黄にはコレステロールが多いため、2個以上は避けた方がよい。イカやエビもコレステロールが極めて多い食品であるが、コレステロールを下げるタウリンも多く含まれているので、コレステロールの吸収される量は必ずしも多くない。また、糖質を多く含んだ菓子類も脂肪の増加につながるので注意が必要である。
■糖尿病
 糖尿病患者には、循環器疾患が多く発生する傾向がある。心疾患が発症する割合は、糖尿病でない者に比べて男性で2〜3倍、女性で5〜6倍高く、心筋梗塞や脳梗塞も増加する。食物の制限、適度な運動、規則正しい生活などは、肥満などの循環器疾患の危険因子も同時にコントロールするので有効である。
■ストレス
 激しい肉体労働、長時間の過重な労働、精神的な緊張の持続、興奮、不眠、親しい者との死別、離婚、失業、破産などのストレスが中枢神経系、自律神経系、内分泌系の変調を起こし、循環器系に影響を及ぼすと考えられている。具体的には、仕事に関係した予期せぬ出来事で驚いたり、仕事が特に荷重であったために血圧が異常に高くなるなどにより、基礎疾患が急激に著しく悪化し発病することや不整脈が原因となって心停止を起こすことがある。
■性
 高血圧や動脈硬化は、男性に多く発生するため、脳血管疾患では男性が女性の2倍程度、虚血性心疾患では3〜10倍程度の発生率と報告されている。女性でも更年期以降は血圧や血中脂質値が上昇する傾向にある。
■年齢
 一般に脳血管疾患も虚血性心疾患も年齢が増すにつれ多くなる。しかし、70歳辺りからは次第に頭打ちになる。
■遺伝
 高脂血症には、遺伝的に現れるものがあって、若いうちから虚血性心疾患が多く発症する例が知られている。
■肥満
 肥満は、高血圧、高脂血症、糖尿病などとの関係があり、虚血性心疾患の危険因子の一つである。
■飲酒
 飲酒は、二つの方向に作用し、適量(日本酒なら1合、ビールなら中ビン1本、ウィスキーならダブルの水割り1杯)の飲酒は、気分を和らげる効果があり、高比重リポ蛋白を増加させる作用があるが、血圧を上げる作用もあり、脳血管疾患や虚血性心疾患の危険因子となる。また、アルコールは、高カロリー源であるので肥満の原因にもなる。
■運動
 運動による効果は、体重減少や心臓や肺の働きを増進するなどと考えられる。激しい運動より軽い運動の方が血圧の低下などに効果があるといわれている。