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広報誌 ネット&ライン No.94 2001 秋号
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リフレッシュコーナー
職場における健康管理 [第7回]
岐阜大学医学部衛生学教室助教授  井奈波良一

心の健康づくり −その1−
【労働者の心の健康に関する現状】
 近年、わが国の経済・産業構造は、大きな転換期を迎えている。今後、経済のグローバル化、情報化やサービス経済化の一層の進展等により、経済・産業構造は大きく転換するとともに、高齢化の急速な進行が見込まれている。このような中、労働者の就労意識の変化や働き方に変化が見られる。
 労働省が実施した労働者健康状況調査によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が増加している。平成9年の調査では、約63%の労働者が職業生活でのストレス等にさらされていると自覚している。この原因としては、約46%の労働者が「職場の人間関係」、約33%の労働者が「仕事の質の問題」及び「仕事の量の問題」を挙げている。また、警察庁の行った自殺者の職業別統計では、管理職および被雇用者の自殺者数が平成9年の6,200人から平成10年には8,700人に急増している。このような中、労働者の自殺に関する損害賠償請求訴訟や労災保険給付請求の増加も社会的注目を集めている。
 心の健康問題によって作業効率の低下や長期休業の発生等が生じ、労働力の損失が大きい。また、重要な業務を任せている労働者が心の健康障害に陥ると、作業能率の著しい低下や長期休業が生じてくることは、企業活動そのものにとってリスクになる。さらに、心の健康に問題があると、事故にもつながる。したがって、心の健康づくり対策は企業の生産性向上や安全確保といったリスクマネジメントとして推進する意義がある。
 そこで、今回は、厚生労働省が平成12年8月に出した指針に基づいて、事業場において事業者が行うことが望ましい労働者の心の健康保持増進のための基本的な措置(以下「メンタルヘルスケア」という。)について述べる。


【メンタルヘルスケアの基本的考え方】
 事業場におけるメンタルヘルスケアの重要性
 ストレスの原因となる要因は、仕事、職業生活、家庭、地域等に存在している。心の健康づくりは、労働者自身がストレスに気づき、これに対処すること(セルフケア)の必要性を認識することが重要である。しかし、職場には労働者自身の力だけでは取り除くことができないストレス要因が存在しているので、労働者の取り組みに加えて、事業者自らが積極的にメンタルヘルスケアを実施することが重要である。
 メンタルヘルスケアの推進にあたっての留意事項
 事業者は、メンタルヘルスケアを推進するに当たって、以下の事項に留意することが重要である。

○心の健康問題の特性
 心の健康については、その評価は容易ではなく、さらに、心の健康問題の発生過程には個人差が大きく、そのプロセスの把握が難しい。また、すべての労働者が心の問題を抱える可能性があるにもかかわらず、健康問題以外の観点から評価される傾向が強いという問題や、心の健康問題自体についての誤解等解決すべき問題が存在している。
○個人のプライバシーへの配慮
 メンタルヘルスケアを進めるに当たっては、労働者のプライバシーの保護及び労働者の意思を尊重することは、労働者が安心して心の健康づくり対策に参加し、心の健康づくり対策が効果的に推進されるための重要な条件になる。
○人事労務管理との連携
 心の健康は、体の健康に比較し、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって、より大きな影響を受ける。したがって、メンタルヘルスケアは、人事労務管理と連携しなければ適切に進まない場合が多い。
○家庭・個人生活等の職場以外の問題
 心の健康問題は、職場の問題のみならず、家庭・個人生活等の職場以外の問題の影響を受けている場合がある。また、本人の性格上の要因も影響を与えることがある。これらは複雑に関係し、相互に影響し合う場合が多い。

以下次回に続く