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広報誌 ネット&ライン No.97 2002 夏号
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電子自治体に向けた文書管理の必要性
文書管理コンサルタント 村岡正司

はじめに
 2001年3月に「e-Japan重点計画」が策定されて以降「世界最先端のIT国家となる。」との国家目標に向け、「電子政府の実現」と合わせた「電子自治体の構築推進」が着実に推進されてきている。さらに、2005年という目標年次への中間段階に差し掛かることから、重点政策5分野を中心に「e-Japan重点計画」の見直し(14年4月9日IT戦略本部了承)も図られている。岐阜県内の市町村においても、その「電子自治体構築の推進」の一環として文書管理システムの構築(起案・決裁・保存まで電子データで管理、情報公開にも対応するシステムの導入)が計画されている。
 文書管理システムは、市町村内の文書(紙文書及び電子文書)を適切に管理するための基盤となるシステムであり、急激な変化を続ける情報化社会の中で、インターネットなどを活用した住民に対する新しいサービスの提供や、市町村の事務の効率化及び高度化を進め、住民の期待に応えた行政を展開するために必要不可欠なシステムであることから、早急な整備が必要である。具体的には、「電子自治体」の運営に適した「文書管理の仕組みを再構築する。」ことにある。
 本稿では電子自治体に向けての「文書管理のあるべき姿」を想定し、重要な検討課題である電子決裁導入への留意点等について提言を行いたい。

電子自治体に向けての文書管理のあるべき姿
文書管理のあるべき姿と達成要件
 文書の管理は、「国民への説明責務」として「記録目的の管理」と「業務への活用目的の管理」の二つが効率的、効果的に行える仕組みになっていることである。
 そのためには、以下のような六つの要件を満たす必要がある。

要件1 行政文書の区分管理
 情報公開への対応に係わる対象文書(以下「行政文書」という。)が開示請求時に、速やかに取り出せるような状態で行政文書と対象外文書(以下「個人文書」という。)が明確に区別されて管理されていることである。
 本来存在すべきものが管理の悪さから「不存在」の扱いとなり、情報隠しと指摘されないためにも
組織共用収納場所と個人収納場所を決めておく。
例: <紙文書>
a 組織共用収納場所:執務室収納什器・書庫等
b 個人文書:個人机
<電子文書>
a 組織共用収納場所:サーバー、個別システム等
b 個人文書:個人PCのハードディスク
「組織共用文書」ファイルと「個人文書」ファイルが目で見て識別が付くようにする(個人ラベルシール等の添付)等「区分管理」をしておく必要がある。

要件2 文書管理者の承認
 組織として管理する文書管理システムへの搭載は文書管理者である「課長等」の承認を受けて行われている。言い換えると、組織共用文書の管理責任は担当職員ではなく、「文書管理者」であり、搭載対象、保存期間、ファイル名(文書名)等についてシステムに正式搭載する前に事前チェックを受けることになる。

要件3 紙文書も電磁的記録も同じ思想で管理
 電子文書においても、紙文書同様に関連電子文書のまとまりである「ファイル」を電子的に作成管理し、保存期間が満了するまでの間、ソフトやハードの技術発展、記録媒体の耐用年数に応じ、他の記録媒体への変換、データ・ファイル形式の変更、定期的なバックアップ等が計画的に行われている。

要件4 不開示情報を含む名称は名称に工夫
 「行政文書ファイル(文書)の名称」に不開示情報を含む場合は、住民に公開する「行政文書ファイル(文書)の名称」を工夫して名称を付与する。

要件5 所在管理
 管理する期間当該文書が特定(当面はファイルとして特定)が可能であり、かつ取り出せるよう所在管理がなされている。具体的には、(1)紙現物ファイルのユニークな番号と目録データとが一致している。(2)紙文書の所在データと目録データとが一致している。(所在データの管理レベルは、現実的なもので行う。(執務室、書庫等))(3)指定の所在収納先に確実に収納されるような運用の仕組みが整備されている。(執務室から書庫等への移動時の運用方法、書庫の現物借覧・戻し入れ等管理方法等)

要件6 保存期間満了時、廃棄・削除の措置の運用の仕組み
 当該の文書が決められた保存期間の間、確実に管理され、期間満了後は、速やかに処分できる状態で管理されている。

文書管理のあるべき姿の運用イメージ
 文書管理のあるべき姿の運用は、下図のようにPhase I:仕掛段階、Phase II:処理段階、Phase III:保存段階、PhaseIV:歴史的長期保存段階の四つからなっている。

■電子自治体での文書管理イメージ図
電子自治体での文書管理イメージ図
 具体的な各Phaseについての運用イメージは、次のとおりである。

PhaseI 個人管理段階(担当者の処理仕掛段階)
紙文書の場合

個人文書のファイルに、個人文書であることが識別できる。(例:「個人文書シール」が貼付されている。)
不要な文書は整理されていて、常にすっきりとした執務環境で仕事ができる状態が保たれている。(机周辺には野積み文書等がない。)
業務で利用するために、手元に持参した行政文書ファイル(組織共用文書)は、退庁時には元の組織共用文書の収納場所に戻されている。

電子文書の場合
個人文書の収納場所であるパソコンのハードディスクには、業務仕掛文書のみが保存されている。
電子メール等の送受信文書は、行政文書(組織共用文書)であり、漏れなく文書管理サーバーに登録されている。
パソコンのハードディスクにおいても、紙文書同様、不要な文書は削除するなど常に文書整理がされている。

PhaseII 課室・係での組織共用管理段階(文書処理段階)
紙文書の場合

文書の処理段階で係等として組織的に用いたものについては、すべて開示請求があった場合に速やかに取り出せるよう管理されている。
組織共用文書であることが識別できるシールが貼付されている。
決裁・供覧等処理(決裁・供覧を要しないものも含む。)が完了するまでの間は、目録データの訂正、削除等は係等内の判断で必要に応じ行われている。
保存期間が1年未満の行政文書は、不要時に整理されており、常に収納に値するもののみが管理されている。

電子文書の場合
決裁・供覧等処理(決裁・供覧を要しないものも含む。)が完了するまでの間は、目録データの訂正、削除等は係等内の判断で必要に応じ行われている。
保存期間が1年未満の行政文書は、不要時に整理されており、常に保存に値するもののみが管理されている。

PhaseIII 文書保存段階
紙文書の場合
〈課として組織共用管理段階(事務室保存)〉

文書の保存段階で課として組織的に保存すべきものがすべて文書管理システムに登録されている。
組織共用文書であることが識別できる「ファイル番号等」背表紙が貼付されている。
課としての処理段階を終えた保存期間1年以上の行政文書は、文書管理者である課長等の承認(ファイル名称、保存期間等の訂正指示があれば訂正)を得て、システムに漏れなく正式登録されている。

〈活用頻度が低下した段階の組織共用管理(書庫等保存)〉
現物の受け入れの確認は、現物とリスト等と照合が行われている。
書庫の収納場所データが文書管理システムに登録されている。
取り出し時には、貸出し管理が行われている。
取り出しのあったものは、必ず元の収納場所に戻されている。
保存期間満了もので保存延長処理の必要がないものは、確実に廃棄処理されていて、かつ目録の措置欄に措置結果が記載されている。

電子文書の場合
係等としての処理段階を終えた保存期間1年以上の行政文書は、文書管理者である課長等の承認(ファイル名称、保存期間等の訂正指示があれば訂正)を得て、システムに漏れなく仮登録から正式登録されている。

PhaseIV 歴史的長期保存管理段階:歴史的価値文書
紙文書の場合

歴史的価値文書の選別基準が設定されている。
現物の受入れの確認は、現物とリスト等と照合が行われている。
収納場所データが管理システムに登録されている。
取り出し時には、貸出し管理が行われている。
取り出しのあったものは、必ず元の収納場所に戻されている。
長期保存の管理場所に管理されている。

電子文書の場合
見読性が保たれるようアプリケーション、媒体等が変換されている。


電子自治体に向けての文書管理の進め方と電子決裁導入の留意点
 新しい文書管理を進めるに当たっては、市町村の実情に合わせた進め方により、現実的な運用を段階的に行うことが望ましい。具体的には、電子決裁システム(文書単位での取扱い)の運用を開始するまでは、「ファイル単位管理」で運用し、電子決裁の運用を開始した時点から電子決裁文書のみ文書単位の登録を試行する。その際、本運用はファイル単位登録を継続する。電子決裁の運用の適用範囲を拡大した時点から文書管理システムの本運用(紙・電子文書単位管理)を開始する。
 また、電子決裁システムにおいても既存の決裁フローをそのままシステム化するだけでは、複雑な仕組みが残ったままとなり、使いづらいシステムとなってしまう可能性がある。システム化による効果をより大きいものにするためには、既存の業務自体を規則や慣習にとらわれず見直し、最適な決裁プロセス形態を求めていく必要がある。

電子決裁導入の留意事項
 電子決裁の狙いは決裁のプロセスを迅速化することにある。
 市町村は、文書事務の電子決裁を進めることにより、業務の高度化や迅速化、さらに、事務処理の効率化など情報技術を活用した行政改革を図ることが求められている。
 今後、市町村が電子決裁を導入するに当たり、留意すべきことを以下に整理した。

 電子決裁導入の留意事項
決裁を行う内容の重要性等により、権限委譲を行うこと。
簡易な内容や周知的な決裁については、事前に関連部門の意見を集約しておくことで、決定権のある部門責任者だけの決裁ができること。
各種報告等精度は要求されるが、新たな判断を伴わない定型的な業務については、決裁自体を省略すること。
協議結果を資料として蓄積し、事前協議済みとして省略可能な合議を省略すること。


電子決裁導入のための検討課題と対応検討参考例
 今後の検討の参考材料として、電子決裁導入のための検討課題とその対応の参考例を以下により整理した。
■電子自治体での文書管理イメージ図
検討課題 対応方法の参考例
(1) 電子決裁運用上の電子文書と紙文書の取扱方法
「紙のみ、電子のみ」か「紙と電子併用」の運用方法を検討
電子化(電子文書又は紙からの電子文書化)の範囲検討
原則として、起案する文書はすべて電子化する方向とする
回議書は、すべて電子化する
少量の文書は電子化する
電子収受文書は、添付文書として扱う
大量の添付文書(図面等)の決裁は、電子と紙の併用方式とする
(2) 長期保存電子文書の取扱い方法
電子文書は、ワープロソフト等の将来的な互換性の問題があり、変換が必要となる
OAツール変更時に一括変換する
(3) E-mailでの電子収受の取扱い方法
E-mailの添付ファイルの収受文書としての取扱方法の検討
E-mailの添付ファイルは、一旦、クライアントのハードディスクに保存し、添付文書として利用する
(4) ワークフローの事前検討事項
ワークフロー事前検討事項
決裁ルートのパターンを整理
飛び決方式の決裁方法
決裁保留方法
長期不在の場合の決裁
決裁ルート上での差戻し先
合議先からの差戻し先
差戻し後の再決裁 等


おわりに
 文書管理システムは、「電子自治体の構築」の基幹となるシステムであり、そのシステムを運用するには「電子自治体に向けた文書管理の仕組みづくり」が前提となる。これから文書管理システムの導入を計画されている市町村の担当者に本稿が少しでも役立つことを期待する。

プロフィール
氏 名 村岡 正司(むらおか しょうじ)
現 職 ニッセイエブロ株式会社 総合研究所所長 兼 チーフコンサルタント
公職歴 行政機関文書管理改善方策研究会 座長(1998.10-1999.3)
(社)行政情報システム研究所(総務庁)
総務庁職員研修講師(情報公開文書管理)(1999年度、2000年度)
運輸省職員研修講師(情報公開文書管理)(1999年度、2000年度)
大蔵省印刷局 文書管理職員研修講師(1999年度)
建設省地方建設局 文書管理職員研修講師(1999年度、2000年度)
国土交通大学校職員研修講師(2001年度)
人事院関東地区係長研修講師(2001年度)
国立公文書館公文書保存管理講習会講師(2001年度)
岐阜県市町村行政情報センター文書管理システム共同研究会委員(1999.11-2000.3)
岐阜県市町村行政情報センター文書管理システム開発部会委員(2000.8-2002.3)
埼玉県文書管理システム基本計画策定検討会アドバイザー(2000年度)